お正月や節句など、日本には昔から季節ごとにたくさんの年中行事がありますね。
そんな行事やお祝いの日に食べる特別な料理が「行事食」です。
食が欧米化してきた現在、昔ながらの行事食に加えて、和洋折衷で洋風の食べ物も取り入れられるようになっています。
子どもや若い世代には、どちらかというと洋風の食べ物の方を好む人も多いのでは?
そんな時だからこそ、昔から受け継がれてきた行事食や、そこに込められた意味を知っておくことは食育にも大切なことではないでしょうか?
そこで今回は、代表的な年中行事と行事食、そこに込められた意味について書いていきます。
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行事食に込められた意味
行事食に込められた意味とはどんな事かというと、家族の健康や幸せを願うものです。
行事食に使われる食材には、昔から言い伝えられてきた意味を持っているものが多く、その意味を知ると大切な思いがより大きくなるような気がします。
例えば小豆(あずき)の赤色には、邪気を払う力があると言われているので、お祝い事の際には、赤飯を炊くことが多いですよね。
行事食を知ることが食育に繋がる
行事食は、季節ごとの旬の食べ物が使われることが多いので、行事食を知ることで旬の食材やその意味合いを知ることにもなります。
食べ物は旬の時期が一番美味しくて栄養価も高く、たくさん出回るので安価です。
行事食を学びながら、旬の食べ物についても知っていくことが大切な食育になりますね。
季節ごとの行事食
日本の主な年中行事と行事食を月別でピックアップしてみました。
1月の行事と行事食
- 正月(1日)
- 人日の節句(7日)
- 鏡開き(11日)
- 小正月(15日)
正月は、新しい年に幸運をもたらす歳神様を家にお迎えする行事です。
家内安全を願って歳神様に餅をお供えし、その餅を入れた雑煮を三が日いただきます。
重箱に詰めるおせち料理は、めでたいことを重ねるという願いが込められています。
【黒豆】
邪気払いやマメに勤勉に働けるようにという願い。
【数の子】
卵の数が多いことにちなんで、子孫繁栄を願う。
【田作り】
片口イワシを農作物の肥料に使ったら豊作になったことにちなんで、五穀豊穣を願う。
【たたきごぼう】
地中深く根が入っているゴボウにちなんで、家の基礎が堅牢であることを願う。
【きんとん】
漢字で書くと「金団」で、金運を招くという願い。
【車エビ】
茹でると曲がるので、腰が曲がるまで長寿でいられるようにという願い。
【鯛の姿焼き】
「めでたい」という語呂合わせ。
【昆布巻き】
「よろこぶ」に通じるものとして縁起がよい。
【筑前煮】
穴にちなんで将来の見通しがよくなるとされる「レンコン」、子芋をたくさんつける「里芋」は子孫繁栄など、他にも地中に根を張る根菜を煮物にして末永い幸せを願う。
おせち料理の重箱に詰める料理には、他にもいろいろとありますが、それぞれに意味が込められています。
その中でも代表的な料理は「祝い肴三種」と言われる三品で、関東と関西で少し違っています。
関東:黒豆、数の子、田作り
関西:黒豆、数の子、たたきごぼう
おせち料理を作るときには、この三品が揃うように作っておきたいですね。
「じんじつのせっく」と読みます。
五節句のひとつで、お正月最後の日に七草を食べて無病息災を願うという行事です。
春の七草の、せり、なずな、ごぎょう、はこべら、ほとけのざ、すずな、すずしろを入れた「七草がゆ」を食べるのが一般的ですね。
お正月にお御馳走をたべて疲れた胃腸を「七草がゆ」で休めるという意味もあります。
歳神様にお供えした鏡餅のお下がりを、無病息災を願っていただきます。
鏡餅は刃物で切らずに、手や木槌で割って、ぜんざいなどにして食べるのが習わしです。
11日間お供えしていたら、ひび割れて割りやすくなっているはずなんですが、昔と違って暖房するせいでしょうか、カビだらけになってしまいますね。
手や木槌で割れないことも。そんなときは水に浸けておくと割れやすくなります。
「こしょうがつ」と読みます。
お正月に忙しく働いた主婦をねぎらう休息の日でもあり「女正月」とも呼ばれているのだそう。
お正月飾りなどを焼く「どんと焼き」をする地域も多いですね。
小正月の行事食は「小豆粥」ですね。
邪気を払う力があると言われる赤色の小豆を用いた「小豆粥」を食べて、一年の無病息災を願うという意味が込められています。
2月の行事と行事食
- 節分(3日)
節分は「季節の分かれ目」という意味があり、一般的に知られているのは2月3日ですが、実は一年間に4回あります。
「立春」「立夏」「立秋」「立冬」と、季節が変わる前日が節分です。
季節の変わり目には邪気(鬼)が生じると考えられていて、その邪気を追い払う儀式がその年の1回目の節分の豆まきです。
豆まきで邪気(鬼)を追い払い、自分の歳の数だけ豆を食べて一年の無事を祈ります。
最近では、「恵方巻」も節分の行事食として人気ですね。
その年の福を司る「歳徳神(としとくじん)」のいる方角が恵方で、歳によって方角が変わります。
恵方を向いて食べるので「恵方巻」と呼ばれるようになりましたが、この風習が始まった頃は「太巻き寿司」とか「丸かぶり寿司」と呼ばれていたそうです。
「恵方巻」を一本まるごと食べることで、無病息災や商売繁盛の運をいただくという意味が込められています。
丸かぶりするのは、縁を切らないためで、途中で止めると運を逃すと言われていて、丸かぶりで一気に食べるのが、運をいただく食べ方なんだそう。
3月の行事と行事食
- 桃の節句(3日)
- 春の彼岸(20日前後)
「桃の節句」は、女の子の成長と健康を願う行事です。「ひな祭り」という方が一般的かも知れないですね。
邪気を払う力があるとされる桃の花や人形を飾ります。
節句の一ヶ月前くらいからお雛様を飾り、節句(3月3日)が終わるとすぐに片付けるのが一般的ですね。
地域によっては、旧暦で桃の節句は4月3日のところもあります。
ちなみに、私の地域は4月3日までお雛様を飾っています。
ひな祭りの行事食は、ちらし寿司や蛤のお吸い物、菱餅などですね。
蛤の貝殻がぴったりと対になっていることにちなんで、仲の良い夫婦と見立てて、将来良いお相手に巡り合えますようにとの願いが込められています。
春の彼岸は先祖をしのび感謝する日で、春分の日の前後7日間です。
ご先祖様に一汁三菜のお霊供繕やぼた餅をお供えします。
ぼた餅の小豆の赤色は邪気を払う力があると言われていて、行事食に使われることが多いですね。
4月の行事と行事食
- 花見(上旬)
花見には、その年の豊作を願って宴を催したという由来があるのをご存知でしょうか。
桜の木は「稲の神が宿る木」とされていたのだそうですが、そんな謂れを知って花見をしている人は数少ないのでは。
花見の行事食は、「桜餅」「桜茶」「花見団子」などです。
春の訪れを楽しみながら、桜の木に宿る神様のご加護をいただく縁起の良い食べ物ですね。
5月の行事と行事食
- 端午の節句(5日)
端午の節句は菖蒲の節句と呼ばれることもあり、子どもの日でもありますね。
男の子の成長と出世を願う日として、江戸時代からの風習が受け継がれていて、男の子には鯉のぼりや五月人形などを飾ってお祝いします。
菖蒲湯に入ると厄を払えるとされていて、端午の節句には菖蒲湯に入る風習もあります。
端午の節句の行事食は、柏餅やちまきですね。
柏の葉は、新芽が出たのちも古い葉が枯れて落ちることがないので、子孫繁栄につながると考えられ、縁起の良い食べ物とされています。
6月の行事と行事食
- 夏至(21日頃)
- 夏越の祓(30日頃)
夏至は1年で昼が一番長い日ですね。
豊作を願って、関東地方では小麦餅、関西地方ではタコを食べる風習があります。
「なごしのはらえ」と読みます。
神社に参拝して、茅の輪をくぐり、人形を流して半年分の汚れを落とし、残り半年の健康と厄除けを祈願します。
夏越は旧暦で行う地域もあり、私の地域では7月末に行われます。
夏越の行事食は、「水無月」という和菓子です。
水無月にも邪気を払う力があるとされている小豆が使われていますね。
7月の行事と行事食
- 七夕(7日)
- 土用の丑の日
七夕は、「棚機津女(たなばたつめ)」という日本の伝説と、中国の「織姫と彦星」の伝説が結びついて定着したとのこと。
私の地域では、スイカやナス、きゅうり、など夏野菜をお供えしていた覚えがあります。
七夕の行事食として、天の川や織姫の織り糸に見立てた「そうめん」を食べる風習があります。
短冊に願いを書いて吊るした笹飾りにお供えをして
土用の丑の日には、うなぎを食べる風習が根付いていますね。
土用の期間は年に4回あり、季節の変わり目の立春、立夏、立秋、立冬直前の18日間のことです。
立夏の土用の丑の日には、栄養価の高いものを食べて暑い夏を乗り切ろうという風習がありますね。
昔と違って、今は栄養価の高い食品を日常的に食べているので、ウナギで栄養をつけるという意味合いはあまりないとも言われています。
ですがこの時期、スーパーへ行くとウナギを焼く匂いが立ち込めていて、買わずにはいられなくなったりしますよね。
我が家も毎年、土用の丑の日にはウナギを食べています。
8月の行事と行事食
- お盆(中旬)
お盆は先祖の霊を祀る行事で、霊魂が家に帰ってくるとされていて、きゅうりの馬やなすの牛を魂の乗り物として飾り、お供えをしてお迎えします。
殺生を避ける仏教では、お盆の行事食は野菜の天ぷら、そうめん、いなり寿司などの精進料理です。
ちなみに、うちも実家も仏教なんですが、家を出た家族が帰省したりと集まると、若い者には精進料理だけでは物足りなくて肉料理や魚料理も出しますけどね。
9月の行事と行事食
- 重陽の節句(9日)
- 中秋の名月(後半)
- 秋の彼岸(23日前後)
「ちょうようのせっく」と読みます。
旧暦では菊が咲く時期でもあり、菊を用いて不老長寿を願うことから「菊の節句」とも言われています。
陰陽思想では機数が縁起が良い陽の数とされていて、一番大きい陽数の9が重なる日ということで、9月9日を重陽としているとのこと。
重陽の節句の行事食は、菊酒や菊茶、栗ご飯などです。
菊の強い香りが邪気を払い長寿をもたらすとされ、菊の花をお酒やお茶に浮かべて不老長寿や繁栄を願います。
秋の収穫祭と結びつくとのことで栗ご飯を食べる風習もあります。
十五夜の満月に、お団子やススキをお供えして、秋の収穫を感謝する行事です。
行事食は月見団子ですね。
秋の彼岸には、先祖供養や墓参りをします。
秋の花である萩にちなんで、「おはぎ」をお供えします。
10月の行事と行事食
- 十三夜(15日頃)
9月の十五夜だけ月見することを「片月見」と呼んで、縁起が良くない事とされています。
そこで10月の十三夜もお月見をするものだとされてきたとのこと。
大豆や栗など、秋の収穫物をお供えしてお月見をします。
11月の行事と行事食
- 亥の子(1番目の亥の日)
- 七五三(15日)
古代中国の風習から伝わった「亥の月の亥の日、亥の刻に穀物を混ぜ込んだ餅を食べると病気にならない。」ことから、無業息災を願う行事です。
子どもをたくさん産むイノシシ(亥)にあやかって、子孫繁栄を願う意味もあるとのこと。
亥の子の行事食は「亥の子餅」ですが、地方色豊かにいろんな亥の子餅があるようですね。
焼き鏝で焼き目を入れてイノシシのような姿にしていたりする亥の子餅もあります。
私の実家では、その年に収穫した新米のもち米で、初めて餅つきするのが亥の子の日でした。
夕刻から地域の子供たちが家々を訪問し、「いのこいのこ、いのこもちついて~♪」と「亥の子歌」を歌いながら、その家の無業息災や繁盛を願う行事もあります。
七五三は、子どもの成長を喜び感謝し、健康と幸せを願って神社にお参りする行事です。
男の子は3歳と5歳、女の子は3歳と7歳の歳に七五三のお祝いをします。
七五三といえば千歳飴ですね。
千歳飴は、子どもが健やかに成長し長寿の願いを込めて、長い棒状、めでたい紅白の飴が作られるようになったそうです。
「千歳」は「千年」でもあり、長生きを願って名付けられた飴ですね。
12月の行事と行事食
- 冬至(21日頃)
- 大晦日(31日)
冬至は1年で一番昼が短く夜が長い日なので、栄養をつけて寒い冬を乗り切ろういう縁起担ぎの行事食があります。
運気をあげるために「ん」がつく食べ物を食べる風習があり、かぼちゃ(なんきん)やにんじんを食べます。
大晦日には、新年を迎えるための準備で、掃除をして家を清めお正月飾りを飾ったり、おせち料理を作ったりします。
そして、一年の締めくくりとして「年越しそば」を食べます。
細く長いそばにあやかって、健康で長寿を願います。
また、そばは切れやすいので、この一年の災厄を断ち切るという意味も込められています。
まとめ
日本の伝統的な行事と行事食を見ていくと、邪気を払い健康や子孫繁栄、豊作などの願いが込められていることが分かります。
また、日本は農耕民族であることにも、改めて気付かされますね。
行事食や行事食の食材は、日本人の身体に合う食べ物であること、和食が一番であることにも気付きます。
行事食に込められた意味を日常の食事にも活かしていくことで、子どもたちに食の大切さを伝えていく食育に繋がるように思います。
日本の伝統行事や食文化、大切に継承していきたいですね。
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